穴加工の種類や切削について
こんにちは、アートウインズです。
今回はいろいろある穴の加工について解説してみようと思います。
穴といっても種類が豊富で丸穴だけではなく、長穴や深穴といった、言葉だけでは紛らわしく、フッと認識しづらくわからなくなる事もあるかと思います。
この記事では穴の種類の解説をしながら、どのようにして切削加工を行っているのかも明記しながら解説していきます。
なるべくわかりやすく解説しているので良いと思われた部分だけでも参考にしてみて下さい。
穴の種類
それでは穴の種類を10種類、順を追って解説していきます。
01:丸穴(まるあな)
文字通り丸い穴のことを指します。
丸といっても真円に近い丸が要求され、厳しい寸法精度や真円度によっては、ただの丸穴加工でも侮れず、クライアントのニーズに応えなければいけません。
切削はドリルで加工する事が可能ですが、寸法公差などによってはエンドミルの加工やリーマ加工で寸法の調整が必要になってきます。
02:長穴(ながあな)
丸穴を横に長く伸ばしたような(カプセル薬)形状の穴で、二つ並んだ穴を一つに繋げるように加工をします。
長穴のメリットは固定する際に、長穴に嵌め込んだピンを穴の長さ分スライドさせる事ができます。
その為、多少横着な寸法や嵌めた後の微調整に適しています。
デメリットは位置精度や固定する強さが低下することで、負荷が掛かると接合する部品と部品にズレが発生する可能性もあります。
切削はエンドミルやドリルを使用します。
ドリルで進入点を加工し、エンドミルで成形と寸法出しを行います。(エンドミルのみでも加工可)
03:ザグリ穴
ボルトや座金を使用する際に、安定して固定するために用いられる形状で、鋳物部品や傾斜の付いた不安定な形状、
壁面や根本R(C)による形状からボルトの干渉を避けるために確保する穴(面)の事。
また、製品にボルトの頭を出っ張らせたくない場合などに、製品の形状内に隠れるようにザグリ穴を堀る設計(深ザグリや皿ザグリ)にする事もよくあります。
※ザグリ面の根元にR面やC面を付ける設計がされている事がありますが、
R面やC面を付ける理由としては、ボルトを締めた際にかかる負荷をR面やC面を付ける事によりザグリ面だけに負荷がかからず、
壁面などに負荷を分散させる効果が有る為、設計されている事があります。
切削はドリルやエンドミルを使用し、エンドミルはザグリ面を成形するために使用します。ドリルはボルトを通す穴加工で使用します。
他にも深ザグリ専用のドリルなども流通しており、ボルトを通す穴加工と深ザグリ穴加工の2工程を1工程に纏めることができる専用のドリルとして活躍しています。
04:止まり穴・貫通穴
止まり穴は穴に底面があるもの。貫通穴は穴に底がなく、突き抜けている穴の事を指します。
切削は主にドリル・エンドミル・リーマなどを使用します。止まり穴は穴底が存在するのでドリルを突くだけではなく、
エンドミルを使用して底を成形する必要があります。また、寸法公差が指定されている場合はエンドミルで壁面を削って寸法を調整する事もあります。
ドリルに関しては先端が尖っていない「フラットドリル」と言われる先端が平たいドリルを使用するとドリルだけの加工でも成形する事が可能です。
(フラットドリルでも誘い穴が必要になる場合も有)
貫通穴はドリルのみで貫通させる事ができます。しかし、面精度や寸法公差によってはエンドミルやリーマを用いる場合があります。
※ドリルで開けて良い穴を「キリ穴」と言います。図面には『Φ10キリ』のように記載してある事があります。
05:下穴(したあな)
指定の場所にタップ加工やビスをねじ込む際に誘いとして開けておく穴の事を言います。
誘いの他にも材料割れの防止や工具の負荷を減らす効果もあり、樹脂や金属を加工する上で下穴は必ず必要になります。
切削はドリルやエンドミルを使用します。
基本的にはドリルで良いものの、製品形状によっては下穴長さを確保する際にエンドミルで底面をフラットにする為に使用する事もあります。
06:深穴(ふかあな)
一般的には加工する穴径の5倍を超える深さの穴を開けることを指します。
企業によって言い分は異なりますが、弊社では見た目や体感で穴径に対して深く彫られているものであれば全て「深穴」と言っており、
クライアントにも通じているので、体感で穴が深ければ「深穴」と言っても良いと思われます。
切削はドリルで加工します。深穴ドリルは穴を開けることに特化した設計になっているため、深く綺麗に加工を行う事ができます。
07:ノックピン穴(ピン穴)
ノックピンとは、工業製品の組付け精度を確保するために用いられるピンのことを言います。
接合時のガイドとなる役目の他に、組み付け時のズレや外部からの衝撃によるズレを防止する役目などもあります。
そのためノックピン穴には微細な精度が求められやすく、クライアントによっても求められ方が異なります。
ピンを圧入するレベルのピン穴や手で嵌めてピッタリ収められるピン穴など、クライアントの要望に対処しながら成形するので凄く繊細な穴になります。
切削は穴の深さやピン穴精度が繊細な為、エンドミルで加工される事が多いかと思われます。
金属などの硬い材料に関しては、エンドミルに負荷や摩耗を抑えるためにドリルで誘い穴(荒取り加工)を開ける事もあります。
08:ネジ穴(タップ穴)
文字どおりネジを嵌める穴です。
穴自体にネジが成形されており、その穴に適切なネジやボルトを嵌め込んで固定します。
デメリットは柔らかい材質で成形されたネジ山がなめやすい(ネジ山が潰れて無くなる事)ので、
締めすぎや繰り返し何度も使用する際は注意が必要です。
※柔らかい材質にはインサートナットなどを使用し、ネジ山部分の材質を金属にして強化する事をおすすめします。
切削は、ドリルやエンドミルで下穴を開け、タップやネジ切り専用工具(プラネットカッターなど)を使用して成形していきます。
規格外の大きなタップは基本的にネジ切り専用工具を使用する事になります。
09:センター穴(もみつけ)
ドリル加工を行う前にドリルがブレないようにあらかじめ誘いの穴を開けておくことを言います。
特に金属系の材質にはセンター穴は必須です。
樹脂に関しても硬くて滑りやすい材質(アクリルなど)はセンター穴を開けていないとドリルが滑り、
ドリルがしなりながら穴を加工する事があるので軸ブレ対策には必須の穴になります。
切削は基本的にセンタードリルというものを使用します。
センタードリルはシャンクが太く、先端は細く有効が短い為、しなりを抑制しながら安定して誘い穴を加工する事が可能です。
最近の工具では面取り工具でもセンター穴を加工する事ができ、面取りと併用して使用する事もできます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は良く目にする穴加工を10種類(ナンバーリングは9)を解説してみました。
工業製品は穴と言ってもいろんな意味を持った穴があり、細かく説明するとまだまだ種類があります。
意味のあまり知らなかった用語や用語解説、切削方法が読者様の参考になれば幸いです。
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