アルミのKNシリーズ(KN材)について
こんにちは、アートウインズです。 アルミで製品(試作品)を作りたいけど「材料が大きくて規格がない...」「このアルミの材質だと歪みが出て加工が難しい」という事が稀にありますよね。 そう言った場合は『KNシリーズ』がオススメです。 そこで、今回はKNシリーズについて弊社の経験も含め、「何故、おすすめなのか」や「メリット・デメリット」を執筆していこうと思います。
1KNシリーズ(KN材)とは
基本的にはアルミ合金系の材料の一種で主に切削加工で使用されるているブロック材です。
ただし、一般的な製造方法で用いられる圧延材とは異なり、KNシリーズは『特殊連続鋳造』といった方法で製造されている鋳造品です。
歪みが小さく良好な切削性があり、圧延では対応していない大きさのブロック材を製造しています。
材料メーカーではこのブロック材を販売しており、ブロック材の規格より小さなサイズであれば
好みのサイズに切断したりフライスをかけたりしてもらう事ができます。(最大、最小サイズの限度あり)
2特長の解説
KNシリーズには1『KN500』2『KN520』3『KN700』の3種類の材質があり、それぞれは一般的に製造されているアルミの「A〇〇〇〇」に相当した成分を持った材料です。 これら3種類の解説をしていきます。
1『KN500』はA5083相当の成分で製造されている連続鋳造品です。
歪みにくく切削性も良いので非常に加工が行いやすいです。
その他にも溶接性が良い事でもしられています。
弊社で御依頼されているお仕事で一番良く利用されている材質になっている為、日本では良く流通している材料なのかな?という印象もあります。
2『KN520』はA5052相当の成分で製造されている連続鋳造品です。
KN500と同様に切削性が良く加工歪みが小さい事が特長です。 但し弊社の観点からだと日本ではあまり用いられているようには見えず、A5052の規格サイズや流通量が多い事やそもそものA5052の特性が良いせいか、 KNシリーズではなくそのままA5052が使用される事が多いイメージです。
A5052の規格外の巨大寸法も「KN500」を代替え品として利用するクライアントが多く見られます。よってKN520は特性を予め考慮して利用されているようです。
3『KN700』は7003相当の成分で製造されている連続鋳造品です。
ジュラルミン系のA2017やA7075は板厚の規格サイズが少なく、KN500よりも硬度が必要な時や極厚材の代替え品として利用されているそうです。
他にも亜鉛合金と同等の強度と優れた靭性を兼ね備えていたり、A7075に比べると硬度が約2/3という利点やコストダウンを考慮してKN700を採用している事があるそうです。
3メリット・デメリット
製品材料としてKNシリーズを採用する際のメリット・デメリットを弊社の経験を交え、4つに厳選しておさらいをしながら解説していきます。
メリット
⑴極厚材の入手及び、短納期で入手可能。
超大型ブロック材として製造されている為、KNシリーズを使用する数多くの理由はこれらだと思います。
この理由に付随して関連パーツ(小物)なども材質を揃える為に使用するといったイメージです。
⑵取り扱いしている材料メーカーが豊富。
材料メーカーは特に限られておらず、アルミを取り扱っているメーカーであればKNシリーズも取り扱っている事が多い(HPやカタログに記載していなくても取り扱いがある可能性も...)ので新たなメーカーを探さずに入手できる可能性があります。既存の取引メーカーに問い合わせてみましょう!!
⑶鋳造品だが脆くない。
例として同じ鋳造品アルミの「ADC12」と比較してみると一目瞭然です。 特徴としてはADC12は鋳鉄と同様に脆く欠けやすい性質があるのですが、それに対してKNシリーズは特に脆さや欠けやすさを感じさせず、圧延材と遜色ないレベルで気にせず切削を行えます。
⑷相当品だが代替品としての性能が高い。
あくまでも相当品なので細かい成分や特長は異なりますが、『特長の解説』でも記したように「歪みにくい・コストダウン・切削性が良い・硬度の緩和」などの良い点も兼ね備えている材質なので極厚材だけがメリットではなく、改善策として敢えて相当品であるKNシリーズを使用する事で得られるメリットもあります。
デメリット
⑴納期に時間が掛かる
短納期で極厚材を入手する上でKN材を採用する事でメリットの一つですが、場合(業種)によってはそれほど短納期ではない場合があります。
一般的に極厚材を入手するには在庫を入手したり特注と言うこともあり、おおよそ1〜2ヶ月掛かるそうです。 それに対して弊社の経験上、大きさや在庫によっても異なりますが入手までにおおよそ1〜2週間程度の時間が掛かります。
確かに特注などよりは短納期で入手する事が可能ですが、弊社のような試作品製造業は中1〜3日くらいでは入手したいのが本音です。
その為、1〜2週間という時間はデメリットになるかと思います。
⑵大きすぎるとフライス注文が不可の場合がある。
材料メーカーで6面や2面のフライスをしてもらえる事で加工工数を減らす事ができます。
しかし、あまりに大きな材料になると取引先の材料メーカーではフライスの対応が出来ない事もあります。
もちろん、メーカーによってフライスできる加工範囲は異なるので一概に寸法までは記せませんが、フライスを注文する時は要確認が必要になります。
自社で巨大なワークをフライスする工程が増えてしまう事は大きなデメリットになるかと思います。
⑶サイズに比例して価格が急増。
普段手のひらサイズの加工をしている方は要注意です‼︎
ワークが巨大になると一つの面積が広くなる為、「少し大きめに注文しよう」といった安易な考えをして5mm大きく注文しただけで数万円単位で材料代が加算される場合があります。
面積の広さを考慮し、できるだけ最小で材料を注文する事で材料代を抑える事が可能です。
万が一とり代が必要な場合は数パターンの見積り依頼をする、若しくは必要分だけのとり代を増やすことをおすすめ致します。
⑷種類が限られている。
KNシリーズには1000番台や2000番台、6000番台の相当品がないのでなるべく成分の近い材質や既存の製品で賄わなければなりません。
開発によって物性に厳しく、使用出来ない事もあるのでそもそKNシリーズを候補として取り入れる事が出来ない場合があります。
4まとめ
業界では極厚材で有名なKNシリーズですがそれだけが取り柄ではなく、歪みにくく切削性が良いなどの特長もあり、製品の形状によってはイレギュラーの対策として使用する事も可能で、切削するうえでの手助けになる事もあります。歪みが原因などで上手く加工が出来ない場合は一度試してみる価値はあると思います。
最後に
業種によってはあまり聞きなれない材料かもしれませんので少しでもお役に立てる事があるかと思い記事にしました‼︎ この記事はあくまでも弊社の経験などをベースに執筆しているので他の会社様とは相違がある部分があると思いますが御了承ください。
また弊社でもKNシリーズの加工を行えますので、見積もりのみでも対応しています。
お気軽にお問合せください。
少し長くなりましたがこの記事を最後まで御覧いただきありがとうございました。