金属加工(切削)の注意点と対策【後編】
こちらは【後編】の記事になります。
この記事を見られる方は始めに【前編】を見て頂くことをオススメ致します。
それでは早速ですが【後編】の説明に入ります。
❸:加工機(マシン)
結論から言うと加工機は「金型加工対応」の加工機が好ましいです。テーブルや主軸の剛性が強く、加工精度も高いので安心して加工を行えます。剛性がある主軸を使用しないと加工時の切削工具に振動が加わり、工具にビビりが生じるので綺麗な切削面にならない(鱗の様な模様になり、ガタガタして見た目が悪い)事や工具の消耗が著しく激しくなる事が多いです。
メーカー推奨の切削条件も剛性のあるマシンがそもそもの前提条件となっているので(カタログの注意事項として記載あり)いくら推奨条件といってもビビりによるチッピングや切削不良の原因に繋がります。
弊社も元々金型加工対応の加工機が無かったため、工具の破損や加工時間の遅延が目立ち、金属切削の生産性が良くありませんでした。しかし、金型加工対応の加工機の導入から切削音や振動が改善され、好条件での切削が可能になりました。その為「加工時間の短縮・工具の延命」といった結果に繋がり、生産性の向上とコスト削減の両方を改善する事が出来ました。加工機の選定でここまでのメリットを見出せたので強くオススメする事が出来ます。
「金型加工対応」に付け加えて『二面拘束』対応の主軸にする事もオススメ致します。
二面拘束を簡単に説明致しますと、通常のツーリングホルダー(エンドミル等を固定してマシンに取り付ける物)はツーリングの凸テーパーとマシンの主軸にある凹テーパーを接地させ、主軸内からツーリングを引っ張って固定させています。
しかし、この説明のままではテーパー部分の一面だけが接地している状態です。
二面拘束の場合は、テーパー部+フランジ部の2面を接地させることで固定強度を上げる事が可能になります。
その為、二面拘束仕様のツーリングを使用する事で更に負荷の抑制や高精度の加工が可能になり、精密加工や重切削加工がより安定します。
※注意としては主軸側とツーリング側の両方が二面拘束仕様でないと効果が全く発揮されないのでマシンの購入時やツールの購入時に仕様の確認をする必要があります。
❹:ワークの固定
上記の「❶切削工具 ❷材質の特徴 ❸加工機」が揃っていてもワークの固定が疎かになっては良い金属の切削加工は行えません。固定が不十分であるとワークの振動によって切削工具の破損(チッピング)やワークの位置ずれで切削不良が生じる原因となります。
切削でのワークの固定方法の代表的な物は「治具やボルトでのクランピング・バイスでの固定・吸着」ですがオススメは『クランピングとバイス加工』になります。比較的に取り扱いが簡単で強度も高いので重宝出来ると思います。『吸着』を利用するには癖が強く、利用するのに実績が無いと困難な加工になると思います。しかし、加工内容によっては威力を強く発揮する(量産など)と思いますので代表の一つとして取り入れさせて頂きました。
❺:切粉(番外編)
最後に一つ、切削以外の番外編として紹介致します。
切削する上で必ず発生する切粉(ワークを削った際に発生する屑)が意外な問題点の一つになります。自治体によってはさほど影響が無い地域もあるかもしれませんがこれから金属加工を始める方は最初に抑えなければならないポイントの一つです。
切粉を廃棄するには産業廃棄物業者に依頼をして料金を支払って引き取ってもらう方法が一般的ですが、切粉をしっかり分別する事で買取ってもらう方法もあります。買取は料金を支払う方法とは逆に頂けるのが一番のメリットですが、それ相応のデメリットもあります。
大きくデメリットになる問題が3つ程あると思っており、それは『分別・油切り・スペース』の問題です。順番に解説していきます。
①分別:金属の切粉を分別する事で買取して頂く事が出来ます。
しかし、様々な金属の切粉や人手によっては分別する行為がかなりのタイムロスになるので場合によっては産業廃棄物として廃棄する方が生産性が向上し、切削での仕事の方がメリットがあるかもしれません。逆に同じ金属(アルミ)を大量に削っていたり人手が足りている場合などは大きなメリットになります。
②油切り:金属加工をする際に使用する切削油を油切りしないと引き取ってもらえない事があります。これも個々に試行錯誤をし、油切りをしっかりして買取って頂かないといけないので少々手間が掛かります。
高価ではありますが、油切り専用のマシンを販売している業者もあるので検討してみるのも良いかと思います。
③スペース:加工の切削量や金属の取り扱い種類に比例して切粉の保管場所が必要になり、スペースを圧迫してしまいます。特に取り扱い種類が多いほど分別の量も多くなり、保管方法や保管場所に悩まされます。
加工するだけでも工程や加工前の試行錯誤が必要になりますが、加工後の切粉だけでもこういったメリット・デメリットを考慮しなければなりません。金属加工をする上で加工をする事だけではなく、それ以外の別の角度からのトラブルにも備える必要があり柔軟に対応しなければなりません。
マグネシウムの様に材質によっては引き取りや買取が出来る業者が限られている材質も存在するので初めての材質に関しては加工する前に引き取り・買取業者に確認を取ることが必要だと思います。
まとめ
今回記事にさせて頂きました「切削工具・材質の特徴・加工機・ワークの固定」を意識して頂ければ切削自体はそこまで難しい事ではありません。良く誤解されがちなのですが、切削の難しさは金属を削る事が難しいのではなく、削りながら+αをする事だと思います。難しい形状・寸法精度・面精度・加工工程と+αは様々ですが、これらは経験値によって必ずカバーする事が出来ますので、先ずは削って見る事が大事だと思います。
この記事は金属加工への取り組み方の知識を共有出来ればと思い執筆した物です。
それでも注意点や対策のほんの一部だと思っています。実際にトラブルは場面に応じて対応しなければなりません。しかし、不具合を感じた際にこの記事が少しでもトラブル解決や金属切削の参考になれば幸いです。
最後に宣伝ですが、弊社では様々な金属の加工実績があり、腕のある加工者や設備環境も整っています。お困りの切削加工が御座いましたら是非1度、アートウインズにお問合せくださいませ。見積だけでも受け付けています。