ADC12について(性質編)
こんにちは。アートウインズです。
今回は「ADC12」の材料についての情報になります。
知らない、若しくは知っているけど詳しくしらない方向けになるべく噛み砕いて捉え易いように説明していこうと思います。
ADC12とは?
ADC12は『アルミダイカスト(キャスト)12種 』の略で「Al-Si-Cu」合金になります。
「ダイカスト」とは鋳造の技術の事で、金型で整形する技術を表す言葉です。要するにアルミダイカストは『アルミニウムの鋳造品』という意味になります。
ADC12が好まれる理由として「機械的性質、被切削性、鋳造性」この3つの性質が非常に良く、バランスの取れている材料だからです。
主に自動車部品等に利用され、ダイカストの生産量の中で約94%とほぼほぼ「ADC12」で締めています。
上記の事からわかる様に流通性が多く入手し易い材料です。
鋳造品と聞くと形が出来上がっている製品を想像してしまいがちですが、ADC12には240×380×2000のサイズでブロック材が存在し、それを切断し販売している材料メーカーがあります。ブロック材に関しては母材の範囲内であればカットしてプレート加工として加工する事も可能です。
ADC12の比重は「2.68」。純アルミの比重が「2.71」でその他アルミ合金を比較してもアルミの中では軽い方です。
「ADC12」を使うにあたってデメリットがあります。
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この辺りの解説をしていきます。
・アルマイト性が良くない。
結論、アルマイト処理は可能ですが、あまり上手く処理が出来ません。弊社でも何度かADC12の黒アルマイトの御依頼を頂き、実績があるのですが、材料の性質上しっかりとした黒には染まらずに緑が混じった様な黒だったり、灰色っぽい黒だったりとしっかりとした黒にはならないイメージが強いです。もちろん黒に染まる時もありますが一般的なアルミ材(A5052やA66061等)に比べると真っ黒ではない事が一目瞭然です。確率的にも不安要素が多いので弊社ではあらかじめクライアントにこの事を都度了承を頂く形で対応させて頂いております。
・光沢が少なく、白く濁った切削面。
アルミ特有の切削面の光沢が無い為、削りっぱなしだと艶がいる品物には向かない材質になっています。磨きを入れる事によって光沢が出ますがやはり若干の濁った感じは残ってしまいます。
・アルミの中でも価格が高く仕入れに時間がかかる。
仕事の依頼する側には材料代が高いというのは少し痛手ですね。日本で主流のアルミ合金「A5052」と「ADC12」を弊社で取引のある材料屋で比較すると、「A5052」は比較的に安価で仕入れ先が豊富でほぼほぼ当日発送で対応して頂けるのに対して、「ADC12」はA5052の価格の約3.5倍で仕入れ先は少なく、中一日で発送と一日以上の時間が掛かってしまいます。加工者側も材料の仕入れ納期が掛かる+材料代が高いというのはプレッシャーの掛かる材料になりますね。
・衝撃に弱く、欠けてしまう。
これが案外厄介な性質です。アルミといえば金属の中でも柔らかく、衝撃が加わると打痕や形状が曲がったりと変化してしまいます。「ADC12」はアルミでも鋳造品の為どうしても衝撃に脆く、衝撃が加わると欠けてしまう事があります。弊社でも加工中に細かい形状部分が何度か欠けてしまい一から製作をやり直した事があります。
・巣は殆ど無いが、0では無い。
結論、アルマイト処理は可能ですが、あまり上手く処理が出来ません。弊社でも何度かADC12の黒アルマイトの御依頼を頂き、実績があるのですが鋳造品ならではの巣の問題ですがこれも結論から述べると、ADC12で作られた鋳造部品には微細の巣がありますが弊社では10年以上の「ADC12」の切削実績があり、年間では数十〜数百種類の品物を製造していますが大きな巣の問題はたった一度しかありませんでした。
この問題の結果は材料メーカーに調査をして頂き、巣ではなく切削不良で加工中にワークが欠け、加工が完了した際に欠けた部分が巣の様に見えてしまったという結論が出ました。
こういった事から弊社の実績上、ブロック材に巣がある確率は皆無だといった結論になっています。
念の為、材料メーカーに「巣がないか?」と問い合わせてみたところ「100%巣がないとは言い切れない」と言った返答を頂いた為。『0では無い』と記載させて頂きました。やはりごく稀に鋳造不良がある様なので発見次第材料メーカーに問い合わせましょう!
以上が(性質編)になります。
ADC12について(切削編)も御座いますので、是非御覧ください。